『救急認定薬剤師』を取得
2023/02/06
日本臨床救急医学会 救急認定薬剤師 籾 慶輔
皆さまは、病院で働く薬剤師にどういう印象を持っていますか?「小さい窓口で薬をくれるひと」「お薬の説明をしてくれるひと」などが一般的かもしれません。
しかし、近年では病棟や外来で医師や看護師などの医療スタッフとともに、患者さまのより近くで治療をサポートする『臨床薬剤師』が増えてきており、当院でも2019年から急性期病棟に薬剤師が常駐して薬物治療の支援を実施しています。
集中治療・救急医療を必要とする患者さまは緊急性や重症度が高く、病態も多岐にわたって多くの合併症も来しています。ハイリスクな薬剤を使用する機会も多く、即座に的確な薬を適切な使用方法で投与する必要があるため、積極的な薬剤師の関与が求められます。
その中でも救急認定薬剤師はチーム医療の一員として、処方提案や薬剤投与速度の算出、投与ルートの管理、 薬効モニタリングや薬物血中濃度モニタリング、副作用モニタリングとその対応支援などの通常業務に加え、中毒物質の同定や心肺蘇生支援などを行い、より安全で効果的な薬物治療の実現に努めます。
近年では、集中治療・救急医療における薬剤師の重要性が叫ばれ、注目されています。診療報酬の後押しもあって徐々に活躍の場は増えてきてはいるものの、その数はまだまだ少なく、ほとんどは都市部の病院に限定されています。実際、2021年時点で救急認定薬剤師は全国に217名程度存在していましたが、筑後地域は2022年に私が取得するまで認定者「ゼロ」の状況でした。
当院は「地域のために 地域とともに」の理念を掲げておりますが、私個人はここに「地域の救急・集中治療をハイレベルに」をプラスして、日々業務に従事しています。
当院の救急搬送件数は年々増加しており、地域医療の拠点としての役割はますます高まっていると感じています。その内訳は、脳血管疾患や虚血性心疾患を始め重症感染症、外傷など多岐にわたり、ほとんどは急性期病棟へ入院して集中治療管理を行うこととなります。集中治療では、多彩な疾患や合併症に対して複数の診療科の医師が関わりながら様々な治療を行うため、病棟スタッフにかかる負担は大きく、薬剤に関して気軽に相談できる籾さんの存在は欠かせません。
持参薬・常用薬の確認に加え、患者さまの病状把握を早期に行い、我々医師が指示する治療内容に対する副作用や相互作用のチェック、さらに薬物投与量の計算、抗菌薬選択の提案、循環器薬をはじめとした特殊薬の調整などを安心してお願いできるのでかなり助かっています。
急性期病棟では、人工呼吸器装着中や外科治療後など、全身管理が必要な患者さまが多く入院しています。治療には様々な薬剤を使用することになり、間違いは許されません。常に病棟に常駐して適時相談できる籾さんは、,医師のみならず看護スタッフからも厚い信頼を得ており、安全性の担保や医療の質の向上に貢献していると思います。
全国的にはまだ数少ない救急認定薬剤師が当院の診療現場の第一線に携わっていることは、高度な医療を提供するうえで強みであり誇りでもあります。
調剤薬局などで働く薬剤師の役割は大変重要です。しかし、チーム医療がより重要な救急・集中治療現場での専任薬剤師が果たす役割は大変大きいと実感しています。籾さんのような薬剤師が、今後増えていくことを願っています。